インタビュー

体系化した人財教育が課題

全日本空輸株式会社
全日本空輸株式会社
取締執行役員 人財戦略室長 兼 ANA人財大学長
國分 裕之氏

昨年開催された「KAIKAカンファレンス2015」では、7社のコンソーシアム(協議会)が7つのテーマで議論を展開しました。

 

今回は、昨年コンソーシアムとしてご参加いただいた全日本空輸株式会社國分様に、お話を伺いました。

「違い」が環境をつくる

前回のKAIKAカンファレンスのコンソーシアムに参加されてのご感想を教えてください。

会社の業種もそうですが、立場もいろいろな方がいらっしゃるので、それが非常によかったですね。いろいろな視点でお話ができたのがよかったです。

企業の競争力を高める為に多様な人材を確保しようとしている会社が増えています。KAIKAカンファレンスでも取り上げられる重要なテーマですが、どのようにお考えですか?

先日、たまたまお会いした方から面白い話を聞きました。その方は鯵を静岡から築地へ運ばれているんですが、鯵だけを運ぶと早く駄目になってしまうのだけれども、一緒に鰻を2、3匹入れたら平気だったそうなんです。「お互いに違うものが入ることで環境が変わるんです」とおっしゃってましたが、異分子が入ってくることが影響し合うみたいなんですね。組織や会社にも似たようなことがあると思います。

女性が成長しやすい環境づくり

今の大学生は就業における男女差の意識があまりないようなんです。だから、学生は女性活躍推進をアピールしている企業を見て、女性だけに特化しているようで、違和感を感じるみたいですね。

採用試験の時は、女性の方が優秀な場合が多いですね。

 

ところが、会社に入りキャリアを積むと差が無くなってくる。入社5、6年後に研修をするのですが、その時に同期の男性社員の印象を女性社員に質問をすると、印象が変わったという反応が多いですね。「最初は私よりも頼りなく見えたのですが 、実力的に近づいていると思います」。更に2、3年後に聞くと「抜かれた気がします」と。

 

なぜそう思うのかと聞くと「自分で天井を作っている」「自分はここまででいいんじゃないかと思っているかも」、「男性の方が伸びしろを持って余裕があって入社してきているから」という意見もありましたね。「もしそうなら、男性の成長に合わせるように努力したらいいんじゃないの?」とアドバイスをしています。その後押しをするのが女性の活躍推進だと思うんですね。

 

女性の後押しをしないと、成長が緩やかになってしまう。男性は、既に成長しやすい環境になっていると思いますが、女性の方にはきっかけがあった方がいいのではと思います。

女性社員も積極的に研修に参加するようにされているわけですね。

これまでは男性中心の会社でしたので、研修も男性が優先されてきたと思います。男女の割合を是正する為にもやらなければいけないので、女性から研修に参加できるようにして、機会を設けるのが会社の責任だと思いますね。そういうことで女性活躍推進を押していると思います。

 

以前は、日本能率協会さんの研修に参加させるとすると、まずは男性から選んでいました。それはやはり切り替えなければいけません。是正をするために、なるべく女性から参加させるようにしています。この研修の参加者は女性にしようと最初から決めてしまうこともあります。そうすると、ようやく男女差がなくなってくる。最初は意図的にしていかないと進まないのですが、それが当たり前になってくると女性も男性も関係なくなってきます。

小会の新入社員研修参加者へのアンケートでは、今年初めて女性で管理職を目指したいという回答がありました。

社員から良く言われるのが「先輩に目指すべきモデルがいない」。今では弊社も女性役員が4名いますが、そういった先輩を目指したいという新入社員が増えればと思います。

人材育成全体を捉える事が課題

今の課題は何でしょうか?

今いる社員を世代別にどのように育成していくかということと、それに合わせて新入社員をどの様に育成していくかのレールを引くことですね。今いる社員をどうのようにしていくかがなければ、結局レールはひけないのでお互いに強く連関しています。

 

「グローバル化」と一言で言っても、30代と40代ではイメージもやり方も立場も違うので、そこが悩みです。部分最適は図れていますが、人材育成を全体像として捉える事が難しい。明確な全体構想がないと、一つ一つはすごくよいことをやっているのですが、自分が受けている研修が何に繋がっているかわからなかったたり、 全体でどういう仕組みになっているのかわからないので短発で終わってしまう。これが今の人事部の最大の解決すべき課題です。社内各部署にいる教育担当者にANAの人財体系を説明を求めても、なかなか答えられないんですね。どういう体系で育成していくのかが、共通認識になっていない。

 

今、管理職にTOEICとビジネスファンダメンタル等の科目を設けていまして、12科目程クリアしないと管理職になれません。ただ、どのタイミングでクリアするべきとは設定していません。だから、直前でクリアする人もいます。各人がいつそれらをクリアすべきなのか、そのタイミングがわからないのはひとつ課題です。

KAIKAカンファレンスでヒントを得たい

一つ一つの施策は良い事をしていると思うのですが、どうつながっているのか明確化できていない、それがここ2年位の悩みです。ひとつの流れになっているのか。トータルパフォーマンスを追求しなければいけないので…。

 

KAIKAカンファレンスでは人材育成の全体像をしっかり考えられている企業がたくさんいらっしゃるので、その発表からいろいろ勉強させていただきたいなと思っています。事例を聞いて自分たちの全体像を作るヒントにしたいと思います。

今年も是非引き続きご協力をいただければと思います。ありがとうございました。

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