インタビュー

必要なのは”人事力”。 組織と人と社会の関係性が個を成長させる。

本間 浩輔氏
ヤフー株式会社
ピープルデベロップメント統轄本部
執行役員
本間 浩輔氏

KAIKAカンファレンス2015を共に作り上げているコンソーシアムメンバーである、サントリーホールディングス株式会社 人事本部 副本部長 キャリア開発部長 斎藤 誠二氏にお話しを伺いました。

10年後、20年後の働き方の変化とは

昨年に引き続き、KAIKAカンファレンスにご参加いただきまして、ありがとうございます。昨年を振り返って、参加されたときのご感想を教えてください。

人事系イベントは比較的、どこも似通った内容のものが多いという印象を感じています。
著名な講演者を呼んで、他のメディアでも聞くことのできるような話をするイベントが多いなか、きちんとコンセプトを決めて、それに合わせたプログラムを作り込んでいるというところが、他の人事系イベントとは違うと思っています。
今回7つのテーマを決定し、意見交換会を開催されていますが、テーマについて実際に企業と議論を交わすと、「聞きたいのはこういうことではない」ということが出てきますよね。
そういう実際のニーズを引き出したり、そのニーズに合わせていこうという動きは、カンファレンス事務局能力というか、巻き込み方、作り方に好感をもっています。

様々な形で御社はご紹介されていますが、ひとづくりにおいて、今直面されている課題があればお聞かせください。

いくつもありますが、10年後とか、20年後の働きがどう変わるのかというのが、興味があります。
本当に毎日会社に来なくてはいけないのかとか、台風で明らかに交通がマヒするのがわかっていても会社に来なくてはいけないのは何故だろうと思います。

最近そのような自然災害の事例が本当に多かったですね。

どうしても会社に来て仕事しなければいけない人は来ればいいと思いますが、そのような時にも行かなければいけないとか、繁忙期や夏のとても暑い時期になぜわざわざ出社しなければいけないのかとか、その辺が変わってきていると思うんです。

これまで会社というのは「お金のために会社のルールに従え、成果出せ」と言っていましたが、これから本当に成果を出すためには、働き方をどう許容して、イノベーション起こしてもらうことも大切だと思います。

求められるのは現場の“人事力”

そういったなかで、今回、意見交換会で議論されていたシニアのテーマはとても興味深いと思いました。
私は「ヤフージャパンに要らない社員は誰一人としていない。その人にあった給与にするということが出来れば、定年も要らないし、役職定年なんてとんでもない」と考えています。
そのためには、現場の”人事力”が大切になってくると思います。
現場の管理職が個人を良く知り、成長によりそい、能力評価、成果の評価を正しくすることができて、それに見合う給与設定ができれば、定年はいらないんです。
個人が自分にあった仕事の仕方を考えて、それに会社がこたえていくのも大切だと思いますし、その働き方をサポートする現場の人事力というのが極めて求められている時代になっていると思います。
高度経済成長の時は、実質的経済力が上がっているから給料を上げず、逆に給料を下げる事が出来たんですよね。

興味深いお話ですね。詳しくお聞かせいただけますか。

実質的なGNP、GDPが上がっていくと、物の値段が上がっていきますよね。
そうすると、給料を変えなければ物価だけが上がっていくので、実質的な豊かさの指標は下がっていくわけです。
当時、企業はどうしていたかというと、給料を上げるのを遅らせることによって、給料格差をつけてきたと解釈できます。
ところが今はデフレなので、給料を上げなければ、その人の給料を実質的に下げたということにはできない。
そうすると、求められるのは、降格です。
これからは、降給をいかにうまくするのかということを求められる。
それも管理職の管理能力の範疇です。

人事力不足=管理能力不足

ところが一方で、企業のフラット化や、上長のプレイングマネジャー化などの影響で、管理能力を付けずにいると、現場の人事力はなくなっていきます。
個の働き方改革をしなくてはいけない一方で、現場の人事力が逆方向に向いているので、このギャップが問題となっています。
それが私の今の問題だし、ヤフーにも同様な現象はみられます。
だから私は人事部が人事をしないほうが良いと思っています。
人事部を置いたとたんに現場は人事部のせいにしますから。
採用も評価も異動も、全部現場で出来るわけです。現場が人事に預けたから、結果的に現場の人事能力がどんどんなくなって、プレイングマネジャーがどんどん増えて、マネジメントよりもプレーヤーの方が評価される。
こんな状況で本当に個は成長するのかと言いたいです。
現場の人事力を取り戻し、かつ多様な働き方にどう対応するか。
ダイバーシティの議論と同じようなところもあると思います。
大切なのは、全社の人事力をどう高めて、新しい働き方にどうマッチさせていくのかというのがこれから大きな課題となってくると思います。
経営戦略の領域に入ってきたとも言えなくない。

人事部以外の社員に必要な“人事力”とは

日本ではダイバーシティを、女性管理職の枠で考えられることが多いですね。枠から入っていくことが問題であって、本質は違うところにあるように思えます。

そういうことが多いですよね。
そういうことを含めて現場の人事力です。
それは私たちがというより、日本の企業の問題だと思います。

人事部が、現場に入りこんで、現場と一緒に動くというイメージでしょうか。

人事部が入っていくのではなく現場の人事力が上がって、それを人事部がサポートするということです。
人事部が入っていくとそれに頼ってしまう。

そうすると最終的に人事部自体が無いということが理想になってくるのでしょうか。

ありえる話だと思います。
そういう会社もあると聞いています。
現場の管理職が、どういう風に現場で人と人との関係をうまくまとめるか、どういう風に自分のモチベーションを管理するのか、どういう風に人を見ていくのか、その究極が現場の人事力だと思っています。
人事部ではない人(ラインの管理職等)の人事力をどう上げるのか、人事センスのない人間を管理職に付けるからおかしくなります。
弊社も例外ではありません。

10年後の会社の役割、あり方

本間さんが考える10年後の働き方はどういったイメージでしょうか。

パフォーマンスが正しく評価されるべきです。
キャリア自律と言われますが、やはり個人が何故仕事をするのかを理解した上で、仕事がどういうことであり、それを自分の能力と働き方によって自由に決められるといったことだと思います。
それをカバーできる会社が強くなると考えています。

個が成長し、充実感を持てる新しい働き方があるのではないかということですね。

そうすると、会社の役割って変わると思うんです。
そういう多様な人、でも人とは繋がりたいとか、良いアイディアを出すために、会社の場にいるとそこで何か起こる。
そういった場に役割が変化していくと思います。
職場の在り方も、在宅が良いとかいけないとかという議論ではなく、本当にいいパフォーマンスが出るために人と会社の関係はどうあるべきかというところに持っていかないといけない。

その年齢までに、人とどのように“つながり”、関係性を築いてきたのかということですね。

企業は、組織の枠に入らなくても自律して働ける人を求めていますが、企業に入ると、人は自律的ではなくなり組織に依存していきます。
結果、雇用の流動性も悪くなるそれを克服するには、個人がプロフェッショナルとして会社と良い関係を作り、会社もそれに対して意識をして、会社と人が望ましい関係に付き合うということが大切だと思います。

自社以外での自分の価値、やりたいことは何かを考えていく時代へ

絶えず外部環境や市場を意識し、自分の成長を考えていくということも課題になってくるということでしょうか。

そうですね。
それは課題の1つですが、それだけをやってしまうと、ビジネススクールが儲かるだけのようにも思います。 むしろ、自分の市場価値とやりたいことの両方考えるほうがいいと思っています。
例えば携帯電話のエンジニアになりたい人は過去は多かったかもしれませんが、今は少ない。それは市場価値の視点です。
一方で、生きがいのようなものも含め、どういう生活したいのか、将来どうしたいのか、家族とどういう関係で生きていきたいのか、これらをうまくミックスして、自分として選んでいくということが必要になってくると思います。
これからは、市場価値だけではなくて、自分と仕事をどういう風に位置付けいくのか、こういう傾向が強くなると思います。

なるほど。自分たちの価値、パフォーマンスをどう出していくのかということに他なりませんね。

そうですね。
この10年で働き方も変わります。
もしかすると、もうあと10年もしたら大企業に入ることがリスクになるかもしれません。
最近は、学生対して、リスキーなのは大企業に入ることだと言っています。
なぜなら、大企業に入って、その会社の仕組みの中で、それだけしかできないようになって、最初勉強しようと思いながら、いつの間にかアフターファイ ブに盛りあがって勉強しなくて、会社にしがみついて、会社の人間関係なんかはなるようになるだろうと思うようになる人がいるから、それが一番リスキーかも しれないと話しています。

過去ではなく、未来の人事部を語りたい

パフォーマンスを正しく評価するという時代になって、しかし一方で、自分としての働き方、どういう生き方をするのかを問われています。

これをどうバランスさせるか、人事部がどうそれに追いついていくかですね。

とりあえず枠を作って数値化するというところで止まっていますよね。

一方、人事部は事例が大好きです。
人事の事例を発表するイベントになぜ多くの人が集まるかというと、他社の事例を学びにくるためだと思いますけど、しかし、事例は5年10年前のことですよね。
ところが、経営者は先を見ています。
たとえば、戦略では人事のようには事例ばかりを語りません。
一方で、人事部は過去ばかり見ています。
この差で15年から20年、ワンジェネレーションのギャップがあります。
戦略人事とはよく言いますが、本当に戦略・経営者側の人事部、制度もないような方へ持っていかないといけないと思います。

最後に、今回「KAIKAカンファレンス2015」でご講演いただきますが、本カンファレンスへの想いやご要望をお聞かせください。

KAIKAカンファレンスは、未来や理想を話す時間があるのがいいなと思っています。
コーディネーターの先生からは、ありきたりな感想は聞きたくないですね。
未来、私たちがどう変わらなくてはいけないのか、批判ではなく対話をしていきたいです。
結局その場で聞いたことを、組織でどう活かすかが重要だと思います。
コーディネーターの先生には、必ず未来志向で理想を語って欲しい。それはお願いしたいです。

 

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