インタビュー

サントリーが目指す”真のグローバル化”とは

斎藤 誠二氏
サントリーホールディングス株式会社
人事本部 副本部長
キャリア開発部長
斎藤 誠二氏

KAIKAカンファレンス2015を共に作り上げているコンソーシアムメンバーである、サントリーホールディングス株式会社 人事本部 副本部長 キャリア開発部長 斎藤 誠二氏にお話しを伺いました。

グローバルに戦うために、まずは日本市場を見る

KAIKAカンファレンス2015の意見交換会にご参加いただきましてありがとうございました。
改めてご感想をお聞かせください。

 

suntory_1有意義な意見交換ができたと思いますし、日本の伝統的な重厚長大企業の  中からはなかなか出てこない意見を、新たなビジネスを起こしている企業の  人事の方から聞けたのはとても刺激になりました。

 

世界的に見ればかなり特殊といえる新卒一括大量採用、長期雇用保証とい  った環境にずっといると、それが当たり前という感覚になりかねませんが、そ  れでは世界の中では通用しないわけです。

 

既存の常識とは異なる環境下で経営を進めなければならない中で、人事としていかに戦略 パートナーとして経営に寄り添い、経営のミッションを実現していくのかについては、新たなビジネスを起こしている企業のHRの責任者の方がよりアンテナを 高く持ってらっしゃいました。今回そういう意見交換ができたのが、私にとって大きな収穫でした。

今まさに直面されている課題がありましたら教えてください。

suntory_2今グローバル化に向けて進んでいますが、我々にとってグローバル化という  のは、少子高齢化で国内市場が伸びないから海外に行くという話では全くあ  りません。相変わらず国内市場も極めて大事だと考えています。

日本のようなマーケットは世界にも稀だと思っています。一人当たりGDPが4  万ドルあって、その人たちが、この37万平方キロという狭い国土、しかも7割  が山ですから、残り3割に1億2500万人いるわけです。

これが例えば将来1億人弱に減るにしても、こんな稠密なマーケットは世界  中にないわけですよね、しかも極めてクォリティに厳しいマーケット。ここで勝ち抜き、勝ち抜く中で生み出した価値を世界に問うていきたいのです。
そうした中で、人材育成は、単に「グローバル化」という言葉で括るべきではないという考えをもっていますが、その辺が悩みどころでもありますね。

グローバル化=日本人が世界に出るではない

グローバル化する企業において、英語が重要視されてきていますが、どのようにお考えですか。

suntory_7英語についても複眼の考え方が必要だと思っています。 1つは、誰もが東京オリンピックに来日した外国のお客さんに、道を教えてあげられる。居酒屋やレストランで隣に外国人が座ったら話しかける。あるいは、職 場の外国籍の従業員と、なんとか英語でのやり取りが出来る。というようなレベルです。これは仮にドメスティックなビジネスを専ら担当する人でも、日本全体 の発展のためにどうしても必要なレベルです。
もう1つは、海外の現地法人に赴任して、そこでエグゼクティブとして部下の現地従業員のマネジメントもできる。戦略も立て、激しい議論もできる、つまりリーダーシップを発揮できる、という高い英語力レベルです。
この両方の英語レベルを分けて求めなくてはいけない、つまり一律に「みんな英語頑張れ」 という話とはまた違うように思うんですよ。今、英語の例を1つ挙げましたけど、これから人材開発を考えた時に、単なるグローバル化という1つの色だけで染 めることは出来ないだろうなという気がしていますね。

海外に行って物を買う事が出来る言語力と、向こうに行って物を売るという言語力では全く違うということでしょうか。

suntory_5そうではなく、目的を分けて考える必要がある、ということだと思います。例えば、真のグローバル企業になろうとしたら、別に日本人がエグゼクティブになる必要は必ずしもないんですね。
世のグローバル企業といわれる企業は国境を越えて活躍できるエグゼクティブを一定人数抱えていると思いますが、その人の国籍は問わないと思うんです。むしろ様々な国籍の人がそうしたチームを形成していることが強みと思います。
サントリーの例でいいますと、サントリーはビーム社を買収しましたが、同社の幹部を軒並 み日本人で占めようなどとは夢にも考えていません。スピリッツビジネスをグローバルに展開しシナジーを生み出して行ける有能な人材こそ必要であり、それが 日本人である必要はありません。ただし、サントリーの企業理念や大切にしている価値観(ミッション、ビジョン、バリュー)はきちんと理解していただく必要 があり、そうした活動は現に行っております。しかし、日本人がそこに行って支配する、その為に日本人を大量に育成するという考え方はありません。
だから、サントリーの理念を持つ人であれば、国籍を問わず活躍してもらえれば、それでい いわけです。ただし、日本発の企業として、日本人でそういう場で大活躍できる人間を一定数は絶対に輩出させたいという気持ちはありますね。したがって、本 当に実力のある日本人を輩出したいけど、その人数はそんなにたくさんはいらないはずです。同時に、ビーム社やオランジーナ社、フルコア社といった、グルー プの有力企業の中から素晴らしい人材を登用することもまた極めて賢いやり方ですのでね。
真のグローバル企業を目指すサントリーとしては、たとえドメスティックなビジネスを担当 する人間であっても、最低限のコミュニケーションを英語でとれるところまでいこう、という目的と、少数ではあるが世界のどこでも通用する強いエグゼクティ ブを輩出する、という目的の両方を視野にいれていく、という考え方です。

なるほど、全員が一律である必要はないわけですね。

そうです。ただ、その中に日本人の強い人材をぜひ輩出したいというのは、強い気持ちとしてはあります。

人材開発は投資。経営者育成は若いうちから。

今後3年から5年にかけて、人事・人材開発において大きなテーマになってくるだろうと思われることについて、ご意見をお聞かせください。

まさに今の話に重なりますけれども、いかに世界で勝負できる人材を創っていくことだと思います。
人材開発は投資ですから、この投資回収は長期スパンで考える必要があります。例えば、優秀なエグゼクティブを開発するには、20代後半~30代前半から、どんな経験を計画的に積ませていくかが重要なテーマであると思います。

20代からですか。

次の経営候補につながるパイプラインを若い段階からどう創っていくのか、そのようなことが最大の課題ではないかと思います。

KAIKAカンファレンスが結ぶ、異業種×異思想

最後に、KAIKAカンファレンス2015期待することを教えてください。

以前、本カンファレンスの前身であるHRDJAPANで登壇させていただいたことがあり、その際に小松製作所様とご一緒しました。その時の印象がとても深 く、弊社とは異なる思想のもとで新しいチャレンジを行っていることが大変参考になりました。様々な事例を聞くことによって違いが明確になり、新たな気づき があり、大変勉強になりました。

そういう意味では、本カンファレンスは、業種・業態関わらず、1つの人材開発というテーマでつながれる場で、互いに気づきあえる場といえるのかもしれませんね。本日は、長時間に渡りありがとうございました。

 

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